教育哲学・教育史学コース
駒込 武(こまごめ たけし)教授
教育史学:植民地教育史
日本の近代と東アジアの近代が交錯する地点で、教育の歴史を考察している。教育は、複数の民族集団のあいだの格差をつくりだし、固定化する傾向を持つと同時に、このような仕組みを認識し、批判し、つくりかえていく力をもたらしもする。そうした両義性に着目しながら研究を進めている。著書として、『世界史のなかの台湾植民地支配―台南長老教中学校からの視座』(2015年)、『戦時下学問の統制と動員』(2011年、共編)、『帝国と学校』(2007年、共編)など。
田中 智子(たなか ともこ)教授
教育史学:近代日本高等教育史
日本の近代とはすなわち「学校創設の時代」である――と思わせるほど、明治の地方紙は教育関係の記事に満ちている。資金も人材も足りないがゆえに、地方長官、府県の役人、議員、宣教師、医師、学者、旧藩主、そして文部省等々、多様な主体がからみ合って教育の場が形づくられていく。その混沌とした実態と制度を研究してきた。「官立」「公立」「私立」の境界も流動的な開化期から、徐々に枠組みが整い出し、関係勢力も変容する20世紀以降へと手を拡げつつある。
VAN STEENPAAL, Niels(ファンステーンパール ニールス)准教授
教育史学:近世教育・思想史、メディア、道徳文化
近世日本の教育史において、義務教育がなかったという点は、もっとも重大な前提であり、我々の現代的な常識を捉えなおせる視点でもある。つまり、政府によって教育内容はもちろん、教育それ自体が規制されていない環境の中、人々はいったい何を、何のために勉強していたのか。そして、そのために必要となる知をどのようにして手に入れていたのか。この根本的問いと葛藤することを通じて、近世的な人間形成の有り様を解明するのが研究の基盤となる。もう少し絞った課題として、道徳を一人個人の「主体性」の問題としてではなく、環境や物質文化と密接する文化的表象としてとらえる、「道徳文化」の研究を行っている(拙著『〈孝子〉という表象 ―近世日本道徳文化史の試み』を参照)。
広瀬 悠三(ひろせ ゆうぞう)准教授
教育哲学:教育哲学・思想、地理的・道徳的教育人間学
人間の形成を、場所・地理性と時間・歴史性の交差する変容過程から捉え直し、現代の人間と教育のあり方を研究している。とりわけ、近・現代ドイツ・フランス・英米の哲学を手がかりにして、どのようにして具体的で多様な地理的現実を生きる子ども・人間が自らを脱し、有機的に他者と結びつき、差異を受け入れながら世界市民として生きることができるかに関心を抱いている。また教育哲学と教育実践の相互連関から立ち現われる、総合的な学習におけるもの作りや芸術的活動、さらには信頼を基にした道徳的・宗教的教育実践における人間の形成に注目している。主な著書に『カントの世界市民的地理教育』(ミネルヴァ書房)などがある。